こんにちは、DangoProject の Dango です。前回(#02)は、企画とコンセプト——“熱い核”から世界観へ広げていく話を書きました。今回はいよいよ、その世界の中で動くシナリオ(物語)を作っていきます。
先に言っておくと、この連載の順番を少し組み替えました。よくある入門だと「キャラを作ってから物語を書く」という流れが多いのですが、自分はその逆で、シナリオが先。キャラクターは物語から生まれてくるタイプです。だから今回はシナリオを先に置きます。今回もあくまで、初めての制作で自分が『魔法少女レベリオン』のシナリオをどう組み立てているかをそのまま話す形で書いていきます。
自分は「シナリオありき」で作る
キャラの設定を先に固めてから話を考える人も多いと思います。でも自分の場合、「何が起きる物語なのか」が先に立っていないと、キャラを作っても動かしどころがないんです。だから、まず物語の大きな流れを決めて、そのあとで「この物語を成立させるには、どんな人物が必要か」を考えます。
これはたぶん、ボカロPとして曲を書くとき、先に世界観を立ち上げてから歌詞をのせていく——という作り方をずっとしてきた影響が大きいと思います。世界と物語が先にあって、そこに“声”としてキャラが入ってくる。その感覚のまま、長編のシナリオも書いています。
物語は「起承転結」——“転”がないと面白くない
物語を面白くする一番の肝は、自分は「転」だと思っています。起承転結でいう「転」、つまりそれまでの流れが大きくひっくり返る瞬間です。ここが弱いと、どれだけ世界観が凝っていても「きれいだけど、退屈」で終わってしまいます。
そして「転」を作るために絶対に欠かせないのが、主人公が何らかの問題に直面すること。順調なだけの物語は動きません。主人公の前に「このままではまずい」という壁が現れて、選択を迫られる——この“直面”こそが物語のエンジンです。だから自分はシナリオを組むとき、まず「この主人公は、どこで、どんな問題にぶつかるのか?」を早い段階で決めます。ここが決まると、物語は勝手に前へ進み始めます。
“転”のタネは、問いを「組み合わせて」膨らませる
では、その「転(=主人公が直面する問題)」をどう見つけるか。自分の場合は、コンセプトの段階で立てた“問い”を掛け合わせて膨らませていくことで見つけます。
『魔法少女レベリオン』でいうと、掛け合わせたのは“問い”と“舞台設定”でした。問いは「なぜ魔法少女なのか?」。舞台設定は「フルダイブ型VRMMO『レベリオン』——つまりゲームの中で起きる物語である」こと。ここは謎ではなく、最初から決まっている前提です。この2つを別々に置いておくのではなく、組み合わせて考える。「魔法少女であること」と「(VRMMOという)ゲームの中の出来事であること」が結びついたとき、主人公にどんな問題が降りかかるのか——そこを膨らませていくと、物語の“転”が自然と立ち上がってきます。
問いがひとつだけだと物語は平坦になりがちですが、問いと設定を掛け合わせると、そこに緊張と謎が生まれる。この掛け算が、自分にとってのシナリオづくりの中心です。手垢のついた「魔法少女もの」も、別の要素と組み合わせた瞬間に、自分だけの物語に変わります。
大きな流れ(縦軸)を先に、細部は後
“転”の見当がついたら、いきなり1行目から書くのではなく、まず起承転結ごとに“あらすじ”をブロック単位でざっくり書くところから始めます。各ブロックは最初、一言〜数行で十分。細かい描写はぜんぶ後回しにして、「起では何が起きて、承でどう積み上がり、転でどうひっくり返り、結でどう着地するか」という大きな枠組みだけを先に組みます。
たとえば自分の場合、「起」はこんな粒度から始まりました。まず主人公がゲームにログインする。純粋にゲームを楽しみたい。時間にも余裕がある——だったら“夏休み”あたりが合いそうだ。 この段階ではまだ、それくらいのラフさです。まず起承転結の四ブロックを、この粗さのまま最後まで通しておきます。
大枠が通ったら、次に各ブロックを詳細化していきます。さっきの「夏休みで時間に余裕がある」から、「じゃあ夏休みを取るなら、社会人より学生のほうが自然だな」→「だったら主人公は女子高生にしよう」という具合に、大枠の都合から細部が決まっていく。登場人物の属性や具体的な設定が固まってくるのは、たいていこの詳細化のフェーズです。
順番はいつも大枠 → 詳細化。先に細部から書き始めると、途中で「あれ、この話どこ向かってたんだっけ」と迷子になりがちです。幹を先に、枝葉は後。長編を最後まで書き切るうえで、いちばん自分を助けてくれた考え方です。
序盤は“普通”に見せて、「転」で裏切る
自分がもうひとつ意識しているのは、序盤をあえて“信じられないくらい普通の”魔法少女バトルものに見せておくこと。そのうえで小さな違和感を少しずつ積み、「転」で一気に回収する。読者が「あれ?」と気づいた瞬間、物語は“ただのバトルもの”から“その人だけの謎解き”に変わります。承のあいだにまいた違和感が、転で効いてくる——この布石をどこに置くかを決めるのが、シナリオ作りのいちばん楽しいところです。
そして、キャラは物語から生まれる
縦軸と問いと違和感が決まると、「この物語を動かすには、どんな人物が要るか」が自然と見えてきます。自分はここで初めてキャラを作ります。
たとえば主人公を、外見はギャル・中身はオタク(VTuber好きのMMOガチ勢)という二面性のある人物にしたのも、「一見よくある魔法少女もの、でも何かズレている」という物語の性質を、キャラ自身にも背負わせたかったからです。物語が先にあって、それを最も引き立てる“配役”としてキャラが決まる。キャラは物語の要求から逆算して生まれる——これが自分の順番です。(この続き、キャラの作り込み方は次回#04で詳しく書きます。)
長編を書き切るための工夫
製品版のシナリオは、書き上げてみると約8万字になりました。これだけの分量になると、「面白く書く」より前に「破綻させず最後まで走り切る」ことのほうが難しくなります。自分がやっているのは、世界観や設定を別メモにまとめておくこと、仕込んだ違和感(伏線)を一覧で管理して回収し忘れないようにすること、そして毎回「背骨(=何を描きたいか)」に戻って確認すること。派手なテクニックより、この地味な管理が長編を支えてくれます。
AIの使いどころ:シナリオのレビュー
書き上げたシナリオは、AIに「プロの構成作家」というペルソナを与えてレビューしてもらっています。狙いは、文章の精度を上げることと、読み手がストレスなく読める文章に整えること。構成の流れで引っかかる箇所はないか、表現が回りくどくないか——そういう観点でチェックして、読みやすく書き換えていきます。
物語の中身やコンセプトは自分。そこにAIを“編集者・レビュアー”として組み合わせる、という使い方です。プログラムの実装をClaude Codeでどう進めているかは、また別の回で具体的に紹介します。

まとめ
自分のシナリオの作り方は、問いと設定を掛け合わせて“転”(主人公が直面する問題)を見つける → 起承転結の縦軸を先に置く → 序盤に違和感をまいて転で回収する → そこから必要なキャラを生む → 地味な管理で最後まで書き切る、という順番です。
いちばん伝えたいのは、物語は「転」がないと面白くならない、そして転を作るには主人公を問題に直面させる必要がある、ということ。キャラから入るのが合う人もいれば、自分のように物語から入るのが合う人もいますが、どちらにせよ“転”だけは外せません。少なくとも自分は、この作り方で初めての長編を書き切ることができました。
次回(#04)は「キャラクターの作り方」。今回できたシナリオから、どうやって“動くキャラ”を逆算して生み出すかを書きます。
あなたが物語を作るとき、先に決めるのは「キャラ」ですか、「物語」ですか? どちらが自分に合うか、よかったらコメントで聞かせてください。
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ボカロP / ギタリスト / ノベルゲーム制作者(社会人兼業クリエイター)
