はじめに
前回の記事では、バンドマンだった僕がボカロPになるまでの経緯をお話ししました。今回はもう一歩踏み込んで、「実際にどうやって1曲を完成させるのか」について書いていきます。
よくある作曲入門では「まずコード進行を覚えましょう」「メロディから作りましょう」と書かれていますが、僕のやり方は少し違います。DangoProjectの曲作りは、世界観から始まります。
この記事は多少の音楽経験がある人(楽器を触ったことがある、DAWを少しいじったことがある)を想定して書いています。完全初心者の方は、まず前回の記事を読んでいただけると流れがつかめると思います。「完全初心者だけど、どう始めればいいか知りたい!」という方は、XのDMやマシュマロでお気軽にご相談ください!
世界観から始める曲作り
なぜ世界観が先なのか
メロディやコードから作り始めると、「かっこいいフレーズはできたけど、何を伝えたい曲なのかわからない」という状態に陥りがちです。特にボカロ曲はMVとセットで発表することが多く、楽曲・歌詞・映像が一体となって世界を作ります。
曲作りの過程では、どうしても自分で歌詞を書かなければならない場面が出てきます。DangoProjectでは基本的にshigek0ngが作詞を担当していますが、忙しい時期は自分で書くこともあります。
実は、初めて自分で歌詞を書いた時に方向性を決めずに取りかかってしまい、書いているうちにあちこちに散らかって、ものすごく時間がかかった経験があります。「この曲で何を言いたいんだっけ?」と途中で迷子になってしまったんです。
この失敗があったからこそ、今は世界観を最初に固めるようにしています。方向性さえ決まっていれば、歌詞もメロディもそこに向かって自然と収束していく。逆に言えば、世界観が曖昧なまま走り出すと、あらゆる工程で迷いが生まれます。
だからこそ、最初に「この曲でどんな世界を見せたいか」を決める。これが僕の曲作りの出発点です。
世界観の作り方
具体的にはこんなことを考えます。
- どんな感情を描くのか ― 切なさ?高揚感?葛藤?
- 誰の視点なのか ― 主人公はどんなキャラクターか
- どんな景色が見えるか ― 色、季節、時間帯、場所
- 聴いた人にどう感じてほしいか ― 共感?驚き?没入?
たとえば1st Releaseの「Glitter」は、暗闇の中で微かな光に手を伸ばすイメージ。
4thの「空のプリズム」は、モノクロの世界に色が差していく瞬間。先に情景があって、そこから音が生まれていきます。
この段階ではメモ帳に殴り書きするだけで十分です。正解はないので、自分がワクワクする世界を自由に描いてください。
世界観からサウンドへ落とし込む
世界観が固まったら、次はそれを音で表現していきます。
まずテンポを決める
最初に決めるのはテンポです。世界観の雰囲気でおおよそのBPMが見えてきます。
- 切ない・内省的な世界 → スローテンポ
- 疾走感・開放的な世界 → BPM速め
- 不穏・ミステリアスな世界 → 変則的なテンポ
ここは音楽経験がある人なら感覚でつかめるはず。迷ったら、自分がイメージに近いと思う既存曲のテンポを参考にするのも手です。
ドラムパターンをイメージする
テンポと一緒に、頭の中でドラムパターンのイメージもかためておきます。8ビートなのか、16ビートなのか、四つ打ちなのか。世界観に合ったリズムの骨格を先にイメージしておくと、後の工程がスムーズになります。
メロディを作る
コード進行より先に、メロディを作ります。ここが一般的な作曲入門と違うところかもしれません。
テンポとドラムのイメージがある状態で、鼻歌でメロディを探っていきます。思いついたらiPhoneなどですぐメモしておくのがおすすめ。ふとした瞬間に浮かんだフレーズほど、後から思い出せなくなるものです。パターンも自分で歌いながら確認することもあります。声に出すと、実際にボーカルが歌った時の自然さがわかりやすい。
打ち込みを開始する
メロディとドラムパターンが揃ったら、いよいよDAWでの打ち込みを開始します。
ここからの順番は、まずドラムとメロディを打ち込み、次にベースを入れます。メロディからベースを付ける時に、少し音楽理論を知っていると楽になります。特に「ダイアトニックコード」の考え方がわかると、メロディに対してどの音をベースに置けばハマるかが見えてきます。難しく考える必要はなくて、キーに対して使える基本のコードの組み合わせを知っておく、くらいの感覚で大丈夫です。
ベースが入ると曲の土台がぐっと安定して、コード感も見えてくる。その後にコードギターやピアノを重ねていきます。
この「リズム→メロディ→ベース→コード楽器」という順番は、バンドで音を重ねていく感覚に近いかもしれません。コード進行を最初に決めてからメロディを乗せるのではなく、メロディとリズムの骨格に対してハーモニーを後から付けていくイメージです。
一人で全部やらなくていい ― チーム制作のすすめ
DangoProjectの制作体制
ここで一つ、これから始める人にぜひ伝えたいことがあります。「ボカロP=全部一人でやる人」とは限りません。
DangoProjectの楽曲は、バンド時代に培った人脈を活かしたチーム制作で成り立っています。
- 作曲・ギター ― 自分(Dango)
- 作詞 ― 共作メンバーに依頼することも
- ベース ― フラペ
- ドラム ― デンジン
- イラスト・MV ― りた
もちろん全パートを一人でこなすボカロPもたくさんいます。でも、得意なことに集中して、苦手な部分は信頼できる仲間に任せるという選択肢もある。バンドをやっていた人なら、この感覚は馴染みがあるはずです。
仲間の見つけ方
「そんな人脈ないよ」という人もいるかもしれません。でも今は、ボカコレやX(Twitter)のボカロコミュニティを通じて、同じ志を持つクリエイターとつながれる時代です。前回の記事でも書きましたが、僕もボカコレで繋がったクリエイターの方々と今も仲良くさせてもらっています。
最初は一人で作ってみて、「ここは誰かに頼みたい」と感じた部分から、少しずつ声をかけていけばいい。いきなり完璧なチームを組む必要はありません。
実際の制作フローまとめ
DangoProjectの場合、作曲の流れはこうなります。
- 世界観を決める ― 感情、情景、色、キャラクターをイメージ
- テンポを決める ― 世界観に合うBPMを設定
- ドラムパターンをイメージする ― リズムの骨格を頭の中でかためる
- メロディを作る ― 鼻歌で探り、iPhoneなどにメモ
- 打ち込み開始 ― ドラムとメロディをDAWに入れる
- ベースを入れる ― ダイアトニックコードを意識しながら土台を固める
- コードギター・ピアノを重ねる ― ハーモニーを付けていく
- 歌詞を入れる ― 世界観に沿った言葉を選ぶ(共作の場合はここで依頼)
ここまでが「作曲」のフェーズです。全工程を一気にやる必要はありません。週末だけ作業するなら、1〜3を1日目、4〜5を2日目…と分けてもいい。社会人として働きながら制作している僕も、この流れを少しずつ進めています。
おわりに
曲作りに正解の順番はありません。コードから作る人もいれば、歌詞から作る人もいる。でも僕の場合は、世界観を先に決めることで迷子にならずに済むようになりました。
最初の1曲は時間がかかって当然です。大事なのは、自分なりのやり方を一度最後まで通してみること。2曲目以降は確実にスムーズになります。
次回は、曲が出来上がった後の最初のステップ。ボーカルに命を吹き込む「調声」について書いていきます。
感想・質問はお気軽に!
この記事を読んで気になったこと、聞いてみたいことがあれば、ぜひ教えてください。
- X(Twitter)の @DangoProject へDM
- 匿名で気軽に聞ける マシュマロ
いただいた質問は、今後の記事のテーマにさせていただくこともあります。
DangoProject
ボカロP / ギタリスト / ノベルゲーム制作者(社会人兼業クリエイター)
