はじめに
「ボカロPって、どうやってなるの?」
よく聞かれる質問です。でも正直、特別なルートなんてありません。僕の場合は、バンドでギターを弾いていた延長線上に、気づいたらボカロPとしての活動がありました。
DangoProjectとして活動を始めて5年。社会人として働きながら、オリジナル楽曲は13作品をリリースし、ボーマスやコミティアといった即売会への参加、弾いてみた動画の投稿、歌ってみた、雑談配信、そしてノベルゲーム「空のプリズム」の制作・公開にまで手を広げています。
この記事では、バンド経験しかなかった僕がどうやってボカロPになり、活動を広げてきたかをお話しします。これから始めたい人の参考になれば嬉しいです。
バンドからボカロPへ ― きっかけの話
もともと僕はバンドでギターを担当していました。アニソンのカバーが中心で、好きな曲を仲間と演奏するのは純粋に楽しかった。でも活動を続けるうちに、ふと疑問が浮かぶようになりました。
「ずっと誰かの曲をカバーし続けるのか?」
カバーバンドとしてステージに立つのは楽しい。でも、いつか逆の立場になりたいと思い始めたんです。自分が作った曲を、誰かがカバーしてくれる。「弾いてみた」「歌ってみた」で取り上げてもらえる。そんな曲を作りたい ―― それが作曲を始めたきっかけでした。
実は、ボカロ(VOCALOID・合成音声)との出会いはもっと前に遡ります。初音ミクが世に出た頃にどハマりして、楽曲を聴きまくっていました。同時にニコニコ動画にもどっぷり浸かり、弾いてみた動画を見てはギターの練習に明け暮れていた。今思えば、あの頃の経験がバンド活動にも、そして今のボカロPとしての活動にも全部つながっています。
だから「ボカロPになろう」と決めたとき、ツールとしてのボカロにはすでに馴染みがありました。ちょうどコロナの影響でライブが思うようにできず、バンドで演奏する機会が減っていた時期でもあった。「ステージに立てないなら、自分の曲をネットで届けよう」と気持ちが切り替わったのも大きかったです。歌い手を探さなくても、自分の作った曲にすぐ歌を乗せられる。しかもキャラクターの個性が楽曲の世界観を引き立ててくれる。リスナーとして感じていたボカロの魅力を、今度は作り手の側から体験する番だと思いました。
始めるのに必要だったもの
当時の僕が実際に揃えたものを振り返ると、最低限はこれだけでした。
すでに持っていたもの(バンド経験から)
- ギター ― 楽曲のギタートラックにそのまま使える
- オーディオインターフェース ― 録音環境があればDTMにも転用できる
- 音楽の基礎知識 ― コード進行、曲構成の感覚はバンドで身についていた
新たに用意したもの
- DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション) ― 楽曲制作の中核ソフト
- 合成音声ソフト ― GUMI(Megpoid)、初音ミク、重音テト、IAなど。作りたい曲の雰囲気で選ぶ
- シンセサイザー音源 ― Serum 2などのソフトシンセで音作りの幅が広がる
重要なのは「全部一度に揃えなくていい」ということ。最初はDAWと1つの合成音声ソフトがあれば曲は作れます。音源やプラグインは、やりたいことが増えてから追加すれば十分です。
バンド経験が活きたこと・足りなかったこと
活きたこと
曲の構造がわかる。 アニソンを何曲もコピーしてきた中で、イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→…という流れが体に染みついていました。ゼロからの人より圧倒的にスムーズに作曲に入れたのは、カバーで蓄積した引き出しのおかげです。
ギターは即戦力。 元々弾いていたギターを、ニコ動の弾いてみた動画に触発されてさらに磨き、バンドを経て、今度は自分の楽曲に乗せている。打ち込みとは違う生の質感が出せるのは弾ける人の強みですし、弾いてみた動画の投稿にもそのまま展開できました。
ライブの感覚。 人前で演奏した経験があると、「聴く人にどう届くか」を自然と考えられます。これは配信活動にもつながりました。
足りなかったこと
ミックス・マスタリング。 バンドではエンジニアに任せていた部分。DTMでは自分でやる必要があり、ここが最初の壁でした。
打ち込みのスキル。 ドラムやベース、シンセをMIDIで打ち込む作業はバンドにはなかった技術。最初は不自然なリズムになりがちでした。
動画制作。 ボカロ曲はMVとセットで発表するのが主流。映像編集は完全にゼロからのスタートでした。
5年間の活動で学んだ3つのこと
1. 完璧を目指さず、まず出す
1st Releaseの「Glitter」を出すまでが一番大変でした。
「もっとクオリティを上げてから…」と思い続けていたら、永遠に出せません。出してみて初めて、反応から学ぶことがたくさんあります。
ただ、現実として初めて曲を上げても知名度がないうちは聴いてもらうこと自体が難しいです。そこでおすすめしたいのが、ニコニコ動画が主導しているイベントへの参加。代表的なのが「ボカコレ(VOCALOID COLLECTION)」です。
ボカコレには参加者同士がお互いの曲を聴き合う文化があり、さらに「全曲チェッカー」と呼ばれる、投稿された楽曲を片っ端から聴いてくれる方々がいます。つまり、知名度ゼロでも「誰にも聴かれない」ということがなくなる。最初の一歩として、これほど心強い環境はありません。実際、僕もボカコレで繋がったクリエイターの方々と今も仲良くさせてもらっています。
今振り返ると、初期の作品は荒削りです。でもそれも含めて自分の成長記録。13作品リリースしてきた中で、確実にできることは増えています。
2. 活動の幅を広げると、つながりが生まれる
ボカロ曲だけでなく、弾いてみた動画や歌ってみた、雑談配信を始めたことで、これまで接点のなかったリスナーやクリエイターとつながれました。
特にショート動画(演奏してみたシリーズ)は気軽に観てもらえるので、新しい層への入口になります。ボーマスやコミティアといった即売会での直接交流も大きな刺激になりました。
3. 音楽の外にも創作は広がる
ティラノビルダーを使って、ノベルゲーム「空のプリズム」を制作・公開しました。
音楽制作で培ったスキル(作曲、音響演出、世界観構築)がゲーム制作にもそのまま活きています。
「ボカロP=音楽だけ」と思われがちですが、ストーリーを作る、映像を作る、ゲームを作るなど、やろうと思えばどこまでも広げられます。クリエイターとしての可能性は、自分で制限しなければ無限です。
これからボカロPを始めたい人へ
僕からのアドバイスはシンプルです。
「やりたい」と思った時点で、始める資格はある。 音楽経験がなくても、機材が揃っていなくても、まず一歩を踏み出してみてください。DAWの無料版や、無料の合成音声ソフトもあります。「社会人だから時間がない」という人もいるかもしれませんが、僕もバンド時代からずっと仕事と両立してきました。限られた時間の中でも、少しずつ積み重ねれば形になります。
バンド経験がある人は、すでに大きなアドバンテージを持っています。演奏技術はもちろん、「曲を作って人に届ける」というマインド自体が、ボカロPの活動に直結します。
そして何より、楽しむこと。仕事をしながらでも、楽しいから5年続けてこれたし、音楽からノベルゲーム制作まで手を広げることができました。
次の記事では、具体的なDTM環境の構築方法や、合成音声ソフトの選び方についてもう少し掘り下げていきます。
感想・質問はお気軽に!
この記事を読んで気になったこと、聞いてみたいことがあれば、ぜひ教えてください。
- X(Twitter)の @DangoProject へDM
- 匿名で気軽に聞ける マシュマロ
いただいた質問は、今後の記事のテーマにさせていただくこともあります。
DangoProject
ボカロP / ギタリスト / ノベルゲーム制作者(社会人兼業クリエイター)
