世界観から始める作曲 ― DangoProjectの制作プロセス全解説

はじめに

はじめまして、DangoProjectのだんごです。

ボカロP・ギタリストとして活動しており、オリジナル楽曲を13曲リリースしています。

最初に断っておきます。

僕は音楽系の学校には一切行っていません。ギターは先生についていましたが、実技特化のレッスンだったため、音楽理論は完全に自力で勉強しました。

仕事をしながら学んでいたので、21時に家に帰ってから2時頃まで勉強する、なんて時期もありました。それでも苦ではなかった。むしろ、とても楽しかった。

ひたすら弾いて、聴いて、作って、失敗して。

ギターを始めてからのカバー曲は三桁を超え、オリジナルバンドでの作曲、アニソンカバーバンドでの活動を経て、現在はボカロPとして活動しています。その長い試行錯誤の中で、ようやく自分なりの作曲ノウハウが体系化されてきました。

音楽学校出身のボカロPとは違うアプローチかもしれません。でも、だからこそ同じように独学で悩んでいる人に届く部分があると思っています。

この記事では、そのプロセスを全部話します。

僕の作曲は、コードやメロディより先に「世界」が来ます。

テクニックの話をする前に、まずその話から始めさせてください。


STEP 1:世界観を決める

曲を作るとき、最初にやるのは「この曲の世界はどこにあるのか」を決めることです。

具体例として、自分の楽曲「空のプリズム」を挙げます。

この曲のテーマは「色がない世界」。そこからスタートして、世界の解像度を少しずつ上げていきました。このとき僕がやっていたのは、頭の中で考えるだけでなく書き出して列挙することです。

実際にこんなふうに書き出していました:

  • バンドサウンドが合うか、それとも別のアプローチか
  • 暗い曲か、明るい曲か
  • 主題(テーマ)を担う楽器は何か
  • ギターはどんなサウンドにするか
  • リズムパターンはどうするか

一つひとつ答えを出すというより、書きながらイメージを膨らませていく感覚です。「色がない世界」というキーワードから連想を広げて、曲の輪郭を作っていく。

なぜこのステップが大事かというと、世界観がすべての音楽的判断の根拠になるからです。

コードが暗くなるのも、テンポが揺れるのも、ギターが歪むのも、「この世界だからそうなる」という理由が生まれる。逆に言えば、世界観がないまま「なんかかっこいい進行」を並べても、曲として統一感が出ない。

今は世界観と各要素を同時に考えられるようになりましたが、最初のうちは書き出しながら解像度を上げていくのがおすすめです。頭の中だけで整理しようとすると、どこかがぼんやりしたまま進んでしまいがちです。

こうして書き出しを重ねた結果、「空のプリズム」は「透明感」を軸にサウンドメイキングをするという方向性が決まりました。世界観を言語化することで、音の選択に一本筋が通る。これがSTEP 1の目的です。


STEP 2:メロディとドラムパターンを一緒に考える

世界観が決まったら、僕はコードより先にメロディとドラムパターンを同時に考えます

まずドラムパターンから

世界観を決める段階で、すでにリズムのイメージはある程度できているはずです。8ビート、16ビート、シャッフル(スウィング)、変拍子など。それに加えて、速度(BPM)もここで決めます。

まだドラムの打ち込みに慣れていない方には、ドラムパターンを口で歌って録音することをおすすめします。「ドゥン、タン、ドドゥン、タン」でも何でもいい。それをDAWで打ち込んでみて、イメージを膨らませましょう。

最初はバスドラ・スネア・ハイハット・クラッシュの基本を鳴らすだけで十分です。細かい打ち込みは後でいくらでも調整できます。

名称はサウンドハウスの記事参照

次にメロディを歌う

ドラムパターンが決まったら、メロディを歌います。必ず録音してください。

曲の構成がイントロ・Aメロ・Bメロ・サビの場合、僕はサビから作ります。順番はサビ→イントロ→Aメロ→Bメロです。

サビが楽曲で1番伝えたい箇所になるので、そこから展開を広げていくとまとまりが出やすい。サビが弱いと曲全体が弱くなってしまいます。

サビのメロディができたら打ち込んでみて、ドラムパターンと合わせて聴いてみましょう。

「?」となっても一旦進む

最初は「なんか違うかも……」となるかもしれません。それで大丈夫です。一旦はそのまま進みましょう。

ここから作曲の知識が生きてきます。


STEP 3:コードで「シナリオ(台本)」を作る

世界観とメロディが決まったら、次はコード進行です。

僕はコードを「シナリオ(台本)」と捉えています。世界観がテーマなら、コードはその物語の台本。どんな感情の流れになるかは、ここで決まります。

まずダイアトニックコードを覚えよう

コード進行を考えるうえで、まず知っておきたいのがダイアトニックコードです。

ダイアトニックコードとは、あるキー(調)の音階だけを使って作られたコードの集まりです。

ピアノを思い浮かべてみてください。白鍵と黒鍵がありますよね。キーCにおいては、白鍵だけを使ってコードを作ると考えるとわかりやすいです。黒鍵(♯や♭の音)を使わずに作れるコードがそのままダイアトニックコードになります。キーCを例に見てみましょう。

キーC のダイアトニックコード

Ⅰ    Ⅱm   Ⅲm   Ⅳ    Ⅴ    Ⅵm   Ⅶm(♭5)
C    Dm   Em   F    G    Am   Bm(♭5)

それぞれのコードには「感情的な役割」があります。

コード役割感じ
C(Ⅰ)トニック安定・家
Dm(Ⅱm)サブドミナント寄り少し暗い、揺れ
Em(Ⅲm)トニック寄り繊細・切ない
F(Ⅳ)サブドミナント広がり・やさしさ
G(Ⅴ)ドミナント緊張・次へ向かう
Am(Ⅵm)トニック寄り哀愁・暗さ

これだけ覚えておけば、まず曲が作れます。

ちなみにキーCの有名曲としては、スピッツの「チェリー」やビートルズの「Let It Be」などがあります。耳馴染みのある曲で実際のコードの響きを確認してみると、理解が深まります。

コードの「明暗」を世界観で決める

キーCのダイアトニックコードの中でも、C・Em・F・G・Amはとくによく使います。

  • 明るい印象にしたいなら C・F・G を中心に
  • 暗い・切ない印象にしたいなら Am・Em・Dm を中心に
  • 揺れる・複雑な感情を表したいなら明暗を混ぜる

たとえば「明るいけど少し切ない」世界観なら:

C → G → Am → F

この進行はいわゆる「王道進行」で、多くのJ-POPやアニソンに使われています。明るいCから入りつつ、Amで切なさが顔を出す。世界観とメロディが強ければ、王道進行は全然飽きません。

他にも覚えておきたい定番進行をいくつか紹介します。

カノン進行

C → G → Am → Em → F → C → F → G

クラシックのパッヘルベルのカノンが由来。安定感と流れるような美しさが特徴で、バラードや感動的なシーンに向いています。

小室進行

Am → F → G → C

TKこと小室哲哉さんが多用したことで有名な進行。マイナーから始まる切なさと、Cで着地する解放感のバランスが絶妙で、90年代J-POPに多く使われました。今でも色あせない進行です。

Just The Two Of Us進行(YOASOBI進行)

Fmaj7 → E7 → Am7 → C7
(Ⅳmaj7 → Ⅲ7 → Ⅵm7 → Ⅰ7)

ジャズのスタンダード「Just The Two Of Us」で使われた進行で、YOASOBIが多用したことから「YOASOBI進行」とも呼ばれます。度数で言うと4→3→6→1の流れ。セブンスコード(7th)が含まれることでジャジーでオシャレな雰囲気が生まれるのが特徴です。


STEP 4:メロディにコードを合わせる

STEP 2でドラムパターンと一緒に作ったメロディ、できましたか?

ここで一つ壁にぶつかります。「さっきダイアトニックコードを覚えたけど、メロディにそのまま当てはめたら合わない……」というやつです。

当然です。鼻歌で作ったメロディはキーCで作られていません。自分が自然に歌ったメロディには、その人が歌いやすい「自分のキー」があります。

メロディのキーを特定する

ここが一番難しいかもしれません。でも焦らなくて大丈夫です。

スケールを感覚で学びましょう。相対音感もついてきますので、時間をかけて。

まずDAWにメロディを打ち込んだら、ピアノロールを開いてみてください。並んでいる音符を眺めながら、こんなふうに耳で確かめていきます。

①メロディを繰り返し聴く

何度も聴いていると、「この音で終わると落ち着く」「この音はなんか宙ぶらりんな感じ」というのが少しずつわかってきます。「落ち着く音」がキーのルートです。

②単音を弾きながら「合う・合わない」を確かめる

DAWのピアノロールやキーボードで、Cから順番に単音を鳴らしながらメロディと重ねてみましょう。「なんかこの音だけ浮く」という音がわかってきます。浮かない音だけを集めると、そのメロディのスケール(音階)が見えてきます。

③同じことを毎日少しずつ続ける

最初は全然わからなくても大丈夫です。毎日5分でいいので、好きな曲のメロディを口ずさみながらDAWで音を拾う練習を続けてみてください。1ヶ月後には「あ、この曲はこの音が中心だな」という感覚が少しずつ育ってきます。これが相対音感です。

完璧な絶対音感がなくても、相対音感さえあれば作曲は十分できます。

どうしてもキーがわからなくなったら、メロディをキーCに合わせてしまいましょう。

ダイアトニックコードの説明で「キーCは白鍵だけで作られる」と話しましたが、メロディも同じです。キーCで作るということは、メロディに使う音も白鍵(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)だけになります。打ち込んだメロディの音が白鍵だけに収まるように移動させてみてください。それだけでコードと合わせやすくなります。

キーに合わせてコードを組み直す

キーが特定できたら、そのキーのダイアトニックコードを使います。先ほどはキーCで説明しましたが、仕組みはどのキーでも同じです。

キーがAmだったらラッキーです。

なぜかというと、キーCとキーAmは平行調と呼ばれる関係で、どちらも白鍵だけで構成されています。使うコードはまったく同じで、C・Dm・Em・F・G・Am・Bm(♭5)。スタートするコードや中心となるコードが違うだけです。キーCで覚えたダイアトニックコードがそのまま使えるので、初心者にとっては非常に取り組みやすいキーです。

では少し難易度を上げて、キーがGメジャーだった場合を見てみましょう。

Gメジャーのスケールはこうなります:

ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ#
G  A  B  C  D  E  F#

キーCと比べると、F#(ファのシャープ)が1つ黒鍵に入ります。たった1つですが、これがあるためにコードも少し変わります。

キーG のダイアトニックコード

Ⅰ    Ⅱm   Ⅲm   Ⅳ    Ⅴ    Ⅵm   Ⅶm(♭5)
G    Am   Bm   C    D    Em   F#m(♭5)

キーCと見比べると、GとDがメジャーに変わり、F#m(♭5)が登場していますね。でも考え方はまったく同じです。 世界観に合わせてこの7つのコードの中から選んでいくだけです。

このように、キーが変わるたびに使える音(スケール)とコードが少しずつ変わります。最初は難しく感じるかもしれませんが、まずはキーCとキーAm・キーGを弾き比べながら「響きの違い」を耳で覚えていくと、自然と他のキーにも応用できるようになります。

当てはまらない音があっても焦らない

コードを当てはめていくと、メロディの一部がコードと「ぶつかる」ことがあります。これは経過音テンションノートと呼ばれるもので、むしろその「ぶつかり」が曲の表情を豊かにします。

すべての音をコードに合わせようとしなくて大丈夫です。メロディが主役、コードは伴奏です。メロディの流れを活かしながら、下から支えるコードを探す感覚で進めましょう。


STEP 5:コードからベースラインを作る

コードが決まったら、ベースラインを作ります。

ベースの役割はシンプルで、コードのルート音(根音)を支えることが基本です。たとえばCのコードならドの音、Amならラの音を中心に鳴らす。これだけで曲がぐっと安定して聴こえます。

まずルート弾きから始める

最初は難しく考えなくて大丈夫です。コードのルート音を1小節ずつ鳴らすだけでも立派なベースラインになります。

コード:C → G → Am → F
ベース:ド  ソ   ラ   ファ

これをドラムパターンと合わせて聴いてみてください。メロディとコードだけだったときより、一気に「曲らしさ」が出るはずです。

リズムに変化をつける

慣れてきたら、ルート音を刻むリズムに変化をつけてみましょう。

  • 4分音符で刻む → 安定感・力強さ
  • 8分音符で刻む → 躍動感・疾走感
  • コードの変わり目だけ鳴らす → 余白・浮遊感

世界観に合わせてどのリズムが合うか、ドラムパターンと一緒に鳴らしながら確かめましょう。

ベースとドラムは「セット」で聴く

ベースとキックドラム(バスドラ)は一緒に動くと聴こえがよくなります。キックが鳴るタイミングにベースのルート音を合わせると、低音に一体感が生まれます。これを意識するだけで、グルーブが出てきます。


ここまでできたら、メロディ・ドラムパターン・コード・ベースの4つが揃いました。作曲の基盤は完成です。

世界観から始まって、ここまで積み上げてきた4つの要素が土台になります。ここから先はアレンジ(ギター、シンセ、ボーカルなど)を乗せていく作業ですが、それはまた別の記事で詳しく解説します。


まとめ:理論はメロディの「補正」に使う

今回紹介した作曲プロセスを振り返ります。

世界観 → メロディ → コード → アレンジ。

僕はメロディ先行を推しています。先に書いたように、メロディとコードは密接な関係がありますが、先にコードを決めて理論の枠組みにはめてしまうと、メロディもよくあるものになりがちです。

理論先行にならないメロディには、本当に作りたいものや、真に新しいものが宿る可能性があります。人それぞれ、これまで聴いてきた曲も、感銘を受けた曲も違うはず。そうしたバックボーンから生まれたメロディはあなただけのものです。ぜひ1から自分の音を作ることをおすすめします。

理論は、作ったものの理屈づけと補正に使う。

これが僕の考え方です。コード理論やダイアトニックは「メロディを縛るルール」ではなく、「作ったものをより良くするための道具」です。最初から理論通りに作ろうとしなくていい。まず歌って、作って、そこから理論で整えていく。

13曲作ってきて、うまくいった曲は必ずこの順番が機能していました。逆に「なんか薄い」と感じた曲は、どこかのステップで理論に引っ張られてメロディが型にはまっていた。

テクニックは後から増やせますが、自分のバックボーンから出てくるメロディは今しか作れません。これからボカロPを目指す人にも、ぜひメロディ先行で試してみてください。

次回は「アレンジ編 ― ギター・シンセ・ボーカルで世界観を完成させる」を書く予定です。


感想・質問はお気軽に!

この記事を読んで気になったこと、聞いてみたいことがあれば、ぜひ教えてください。

いただいた質問は、今後の記事のテーマにさせていただくこともあります。


DangoProject
ボカロP / ギタリスト / ノベルゲーム制作者(社会人兼業クリエイター)

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